口腔内に現れるだけじゃない薬の副作用
歯科を受診する患者さんのなかには、慢性疾患があり、複数の薬を内服している方がいます。薬の副作用が口腔内および全身に発現することがあり、歯科診療において気づくこともあることから、薬やその副作用について知っておくことが必要です。
口腔に現れる副作用
代表的な副作用を4つ挙げたいと思います。
①口腔乾燥
薬に起因する口腔乾燥については、多剤服用で起こることが多いと言われています。口腔乾燥は全身疾患と薬の副作用と加齢の複合的な要因で生じると考えられています。また、加齢によって唾液腺の萎縮や機能低下が起こるため、唾液分泌量は低下し口腔乾燥が生じます。

②不随運動
抗精神病薬や抗パーキンソン病薬の副作用により、不随意運動が発現することがあります。口腔領域(舌、口唇、下顎)に認められる不随意運動をオーラルジスキネジアと言い、下顎をもぐもぐさせる動き、舌の突出や異常な口唇の動きが特徴であり、出現部位や運動パターン、重症度はさまざまです。
③歯肉増殖
狭心症や高血圧の治療薬としてよく用いられるカルシウム拮抗薬(ニフェジピン、ジルチアゼムなど)による副作用で、歯肉増殖が起こることが知られています。そのほかにも、抗てんかん薬(フェニトインバルプロ酸ナトリウムなど)と免疫抑制剤(シクロスポリン)があげられます。
④骨吸収抑制薬関連顎骨壊死
骨粗鬆症、腫瘍の骨転移などの治療に用いられるビスフォスフォネート剤やデノスマブにより難治性の顎骨壊死・顎骨骨随炎の発生が起こるとされています。骨への侵襲的歯科治療(抜歯、インプラント埋入、根尖あるいは歯周外科手術など)や歯周病・根尖性歯周炎などの炎症性疾患、口腔衛生状態の不良、不適合義歯がリスク因子となります。

全身に現れる副作用
薬の影響により全身に現れる症状は、口腔に現れるよりも頻度が高く、早期に気づく必要があります。ここでは、3つ挙げたいと思います。
①錐体外路症状
錐体外路症状とは錐体外路という神経経路の障害で、脳基底核が主に関与しており、反射やバランスといった不随意運動にかかわります。抗精神病薬や制吐剤などが原因で、パーキンソニズムやジアトニア、ジスキネジアなどの症状が起こります。具体的には振戦(手の震え)、寡動・無動(動作が遅くなる)、筋固縮(筋肉のこわばり)、姿勢反射障害(姿勢が保てなくなる)等の症状があげられますが、薬剤によって起こるパーキンソニズムでは、運動緩慢、筋固縮が中心で、振戦は少ないと言われています。

②傾眠・筋弛緩
末梢性神経障害に効果のある薬や、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬の催眠・鎮痛作用(穏やかに眠りに導く作用)、筋弛緩作用(筋肉の緊張をほぐす作用)により、眠気、めまい、ふらつき、脱力感といった副作用が生じることがあります。神経障害性疼痛治療薬のプレガバリンは、神経が障害されることによるしびれや痛みに使用される薬であり、多くの患者さんに処方されています。筋弛緩作用により嚥下に関連する筋も弛緩してしまい、誤嚥の原因となることもあり、薬の効果が持続すると、朝の調子が悪い、朝食時にむせるという症状となって現れます。

③食欲低下
抗がん剤のほか、高齢者でよく処方されているコリンエステラーゼ阻害薬(抗認知症薬)、ジギタリス(心不全の治療薬)、テオフィリン(喘息の治療薬)、プレガバリン、鉄剤などにより悪心・嘔吐で食欲低下につながることがあります。また、NSAIDs、ビスフォスフォネート製剤、経口糖尿病薬、抗生物質なども消化管障害を起こしやすく、胃部不快感などから食欲低下となることがあります。意思疎通の難しい認知症患者さんでは、食事量の減少や体重減少がみられる場合、摂食嚥下障害や口腔疾患(義歯不適合や歯・歯肉の痛みなど)だけでなく、薬の副作用はないか注意する必要があります。

高齢患者さんを診るときに確認する服用薬。どの薬がどのような副作用となって口腔や全身に現れるかを把握することが大事です。口腔内だけでなく、患者さんの動作やしぐさにも目向けられるようになりましょう。