介護のための口腔ケア②
口腔ケアはなぜ行わなくてはならないの?
超高齢社会を迎え、急増する要介護高齢者のQOL向上を目指した生活支援が必要となり、口腔領域では口腔ケアの実践が大変重要になっています。
口腔ケアの目的は、口の中を清潔にするだけではなく、歯や口の疾患を予防し、口腔の機能を維持することにあります。また、口腔ケアは、QOLの向上のみならず誤嚥性肺炎や感染性内膜炎などの全身疾患の予防、栄養状態の維持・向上にもつながります。
①口腔と全身の健康
不潔な口腔は、全身に対してどのような影響を及ぼすのでしょうか。口腔内細菌と内科疾患の関連性、噛む機能と老化・認知症の関連性など、口腔環境が高齢者の全身の健康と密接に関連していることが、近年明らかになってきました。
細菌の塊である歯垢は、虫歯や歯周病の直接的な危険因子であると同時に、全身疾患を引き起こす菌の温床としての役割を果たす可能性が高いのです。
口の中の細菌が関与すると考えられる代表的な疾患としては、
- 感染性心内膜炎、敗血症
- 虚血性心疾患<
- 脳梗塞
- 糖尿病
- 誤嚥性肺炎
- 早産
- バージャー病
などがあげられます。
要介護高齢者は、健康な人にとっては病原体といえないような細菌によって、日和見感染症、感染性内膜炎や誤嚥性肺炎に陥ることがありますが、口腔ケアを行えばこれらの疾患を予防できることが分かってきました。つまり口腔ケアは、単に歯や歯茎のためだけではなく、生活援助に加えて全身疾患の予防など、生命の維持、増進に直結したケアでもあるのです。
②口の状況からみた口腔ケアの必要性
口の中には常に37度前後に保たれ、唾液という水分があり、定期的に食物が通過をするので、細菌が増えやすい状況になっています。
特に寝たきりの方は、自分で清掃することが難しくなるので、口の中には細菌が多く棲息することになります。しかも高齢になると唾液分泌が低下したり舌の動きが悪くなるため口腔内自浄作用は低下し、口の中を清潔に保つことが難しくなります。
口の中の細菌が誤嚥されてしまうと、誤嚥性肺炎を引き起こされやすくなります。予防対策としては誤嚥性肺炎に移行しないように、口の中の細菌を取り除いて清潔にしておく、つまり口腔ケアを行うことが重要です!
歯垢中の細菌は、なぜ全身疾患を引き起こすのでしょうか?
健康な人の血液は無菌ですが、例えば歯周病になると、歯科治療だけでなく、ブラッシングや噛む運動によってできた傷口から細菌が血液中に侵入し、菌血症(血液中から生きた細菌が検出されること)を生じます。さらに、高齢者や免疫不全の方では菌血症から敗血症(血液中で細菌が排出される状態)に移行します。また、心不全などで心臓の動きが不規則になったり、心臓に人工弁が装着されている場合は、心臓内の血液に渦巻きができてそこに口腔細菌が溜まり、心内膜炎となります。
また、嚥下反射や咳反射が低下している高齢者では、口腔細菌を含む唾液などを知らず知らずのうちに誤嚥することがあり、(不顕性誤嚥といいます)こうして口腔細菌が肺で定着し、肺炎を起こすことがあります。
★口腔ケアの効果
1.口腔感染症の予防
虫歯や歯周病などの歯科疾患やカンジダ性口内炎などの口腔感染症を予防します。
2.口腔機能の維持・回復
噛む機能の改善および摂食・嚥下機能障害の改善、口腔機能の低下や廃用性症候群の予防、唾液分泌促進や味覚、触感、温度感覚などの感覚機能の向上をはかります。
3.全身感染症の予防
誤嚥性肺炎、感染性内膜炎、日和見感染症の原因となる口の中の細菌の数を減少させ、細菌の質的・量的バランスを正常化させることで全身感染症の予防をはかります。
4.全身状態やQOLの向上
口腔ケアの効果で傾向摂食を促し、低栄養や脱水を防ぐことで、体力回復や意欲向上、全身状態の改善ができます。
5.コミュニケーション機能の回復
構音機能の維持・回復によりコミュニケーション機能を回復します。
6.社会経済効果
口腔ケアの普及により、要介護高齢者の全身状態が改善され、トータルな介護量、看護料の削減が期待され、社会生産性の向上につながる可能性があります。また、誤嚥性肺炎などの全身疾患の予防効果により医療削減効果が期待されます。