寝たきりの方の頬や口唇を咬まないようにするには?
摂食嚥下障害があり、あまり経口摂取されていない方ですが、口腔ケア中や日常生活でもよく頬や口唇を噛んでしまっているようです。どうすれば頬や口唇を噛まなくなるでしょうか?
頬や口唇を噛む原因
歯ぎしりや食いしばり、口腔ケアの際の反射などが考えられます。また、歯並びが悪い、ストレスや疲労、加齢、脳性まひや脳血管障害などによる脳のコントロールの低下があげられます。加齢による構内の組織や筋肉の変化、歯の摩耗や歯周病などが進行することで、かみ合わせが変化し、構内を傷つけるリスクも高まります。
どのような時に頬や口唇を噛んでしまうかを把握し、噛まない環境を整えましょう
まずは口腔周囲の状態、口腔内の状況を確認してみてください。あまり経口摂取されていない方の場合、お口を動かすことが少なく、口腔周囲が硬くなっているのかもしれません。また、口腔周囲に緊張が入り、口唇が内側へ巻き込みやすい状況になっている場合もあります。このような状況が長期にわたると、歯列が乱れて頬などを噛みやすい状態になることもあります。そのほかにも、ベッド上で側臥位になる方は枕に頬が当たってしまい、内側に押された頬を噛んでしまうこともあります。
口腔周囲、口腔内を観察しましょう
口を動かすことが少ないと口腔周囲が硬くなり、頬や口唇を噛みやすくなったりします。そのような方には、口腔周囲をほぐすところから始めてみてください。長期にわたり経口摂取されていない方は口腔周囲が硬くなるだけでなく、舌を動かすことも少なくなることから、歯並びが乱れてしまうこともあります。そのような場合は、口腔周囲をほぐすことに加え、マウスピースを装着し、今以上に歯並びが乱れないようにする方法もありますので、歯科医師に相談してみましょう。
口唇の巻き込みにも注意しましょう
口腔ケア中に口唇を噛んでしまったりすることもあります。また、口腔ケア中に口腔周囲に急に緊張が入ってしまい、力が入った状態の口唇を歯ブラシの柄で挟んでしまって傷を作ってしまうこともあります。口腔周囲をあまり動かせず、口唇が内側に入り込んでいる方は、歯ブラシ等使用時に口唇を巻き込んで傷をつけてしまうことがあるため、気を付けましょう。口腔周囲が硬くなっていて、口唇が内側に入り込んでいる場合は、つねに歯に沿うように張り付いている頬や口唇を歯から離すように、膨らますようにしてほぐすようにしましょう。
ベッド上での姿勢も確認しましょう
側臥位になると、枕と頬が当たりやすくなるため、頬を噛みやすい状態になってしまいます。枕の位置を頬に当たりにくいように変えてみてください。それでも普段使いの枕では頬を噛んでしまう方には、側臥位時には頬骨が支えられるように作られた枕の上に置く枕を使ってみるのもよいでしょう。枕の上に枕を載せ横を向くと、頬に枕が当たらず頬を噛みにくくなります。
口腔ケア中に、口の中を触れると痛い場所や、嘔吐を誘発する場所があります。そこに触れると反射的に口を閉じようとして、ケアしている人の指を噛んでしまう可能性があります。口腔ケアの際には刺激する場所や力の強さに十分に注意して、額や頬などの口腔以外のところもマッサージしながら両側の咬筋をほぐすなどをして口腔ケアをしていきしましょう。また、歯ぎしりや食いしばりは必ずしも音がするとは限りません。ご本人や周りの人が気付かないことも多いです。定期的に歯科も受けるようにしましょうどのような状況で頬や口唇を噛んでしまうのか、その方の口腔内だけではなく、ベッド上の姿勢などもよく観察してみてください。トレーニングなどによる機能へのアプローチの前に、まずは「噛まない環境」を整えてみましょう。