高齢者に多い「歯の根面のむし歯」
高齢になっても多くの歯を残せる人が増えてきました。
しかしその一方で「歯の根面の虫歯が増えてきています。」
歯周病などにより、歯ぐきが下がると、今まで歯ぐきに隠れていた歯の歯面が露出してきます。
この部分にできる虫歯を「根面の虫歯」といいます。
進行すれば、歯の噛むところが虫歯になっていなくても、根元から歯が折れてしますこともあります。
施設に入居している高齢者のお口を健診すると、根元から歯が折れて、歯の根が歯ぐきに埋まっている状態の方をよく診ます。
75歳以降にできた虫歯の大多数が、この根面の虫歯であると言われています。
逆に、通常の噛み合わせの面や、歯の間には、虫歯は、できにくいです。
これは、高齢者は、エナメル質が若い方に比べて、硬く、酸に溶けにくいためです。
根面の虫歯は、進行するとせっかく残せていた歯を失ってしまうことにもなりかねず、高齢の方は特に注意を払っていただきたい虫歯です。
根面はなぜ虫歯になりやすいのでしょうか?
歯は、人体でもっとも硬いエナメル質で覆われています。
しかし、歯の根の表面は象牙質より薄いセメント質が覆っているだけです。
エナメル質はありません。
また、象牙質やセメント質は酸に弱く、歯の成分が溶け出しPHも高めです。
これは、エナメル質よりも歯の成分が溶けやすいことを意味しています。
つまり、歯の根面は虫歯になりやすいのです。
高齢の方に根面虫歯が多い理由は、
① 歳を重ねると唾液の分泌される量が少なくなったり、持病のお薬の副作用で唾液が出にくくなることがあります。
唾液が減ると、飲食後に細菌の出す酸を中和するのに時間がかかったりして、虫歯になりやすくなります。
② 舌や唇など、お口の周りの筋肉が衰えると、お口の中全体に唾液が行き渡りにくくなり、唾液の流れも悪くなります。
その結果、食べかすなどがお口に残りやすくなります
③ 根面は歯ブラシを当てるのが難しく、プラークが溜りがちになります。
加齢にともない手を細かく動かしにくくなるとプラークを落とすのが、さらに難しくなっていきます。
④ 根面虫歯は歯ぐきが下がって、歯の根が露出しない限り起こりません。歯ぐきが下がる原因の最たるものは、歯周病です。
高齢者の方ほど、、歯周病になっている割合が多いです。
根面虫歯を予防するにはどうしたらいいのでしょうか?
- プラークをきちんと除去できるように、ご自身にあったセルフケアの方法を歯科医院で指導してもらいましょう。
部分入れ歯を使用している方は、バネのかかっている歯に汚れが残りやすいので、注意してみがくようにしましょう。
また、総入れ歯でも、根のみ保存している場合があります。その場合も、念入りにプラークが付着しないように歯ブラシを使用する事が重要です。
- 根面虫歯にも、フッ素は有効です。
フッ素入りの歯みがき剤に加え、フッ素洗口液も併用するとより効果的に期待できます。
- 根面虫歯は、早期発見、早期治療、メンテナンスで管理していくことが必要です。
メンテナンスでは、根面が酸に強くなるように、露出した根面に非常に高濃度のフッ素を塗布します。
また、歯ぐきが下がって根面が露出しないように、若いうちから歯周病を予防していく事も大切です。
根面虫歯の治療は、
通常の虫歯の治療と同じように、感染した部位を除去してゆきます。
その後、欠損部位の範囲によります。
欠損部位が狭い場合には、合成樹脂充填を行います。
欠損部位の範囲が広く、合成樹脂充填では、行うと、歯の形態が再現できない場合は、冠を被せる事になります。
また、根面虫歯が酷い場合は、神経まで虫歯が到達していると場合は、
神経の処置である根管治療を行います。神経が無い歯は、破折しやすいので、支柱を入れて、冠を被せて保護します。