かむ力(そしゃく能力)とは何でしょう?
「かんで含める」「砂をかむ」「一枚かむ」など、かむことに関することわざや用語は数多くあります。
かむとは、上下の歯ではさんで物をつぶしたり砕いたりするそしゃく運動の一部です。
かむことには気持ちを落ち着かせる効果があるといわれます。
脳とも関係があり、歯を多く失ってよくかめなくなった高齢者は、脳の容量が減少する傾向にあるそうです。
実際にかんでいる最中は脳の血流が増えるため、しっかりかむことが認知症の改善や予防にかかわっているとも報告されています。
私たちの「かむ力」はどのぐらいなのでしょう。
すべての歯がそろい、歯並びがきれいな成人の場合、最も強くかみしめた時の圧力は大臼歯で約50キロ、小臼歯で約15キロ、前歯が約12キロです。
これはあくまで。平均値で、スポーツ選手が瞬発力を出すためにかみしめる時は、成人の2倍にもなります。
スポーツ選手はそのために、歯の破折が多い傾向になり、残念ながら、歯の喪失しやすいですので注意が必要です。
一般にかむ力が強すぎと問題が出ます。
かむが強いと、歯の破折や歯周病や、顎の骨の隆起、顎関節の不具合、顎の周りの筋肉疲労感が起こりやすいです。
歯の破折は、破折部位の歯肉側の先端がどこで、折れているかで、保存が可能が決まります。少なくとも、歯肉側の先端が、歯の周りの骨より上でないと保存はできません。
骨より下になっていると、そこから、細菌が入り、歯肉が腫れてくる場合や、残っている根が少なく、保存治療の冠が脱離してくる事が多くなります。
かむ力が強いことよる歯周病は、歯が必要以上に強い力を受けるために、動揺が起こり、歯と骨とを繋いでいる歯根膜が切れて、歯周ポケットという病的な歯ぐきの溝ができます。そこへ、歯周病菌が入ります。それが歯周病の始まりです。日々、食事のたびに歯は揺さぶられていくと同時に歯周病菌が繁殖をしてゆきます。
病的な歯周ポケットがどんどん進行して重症化して最後は歯が抜ける事となります。
顎の骨の隆起です。かむという一連の運動により、歯を支えている骨が強い力に抵抗している現象と捉えられます。
骨の細胞が強い力がかかる部位で骨を過度に作ります。この場合に、骨が分厚くなります。起こりやすい部位のは、下顎の小臼歯の内側です。これを下顎骨隆起と呼びます。
顎関節の不具合は、顎関節は、関節頭と関節窩と靭帯と関節円板でできております。かむ力が強くなると、関節頭と関節窩の間にある関節円板に負荷がかかります。
そのずれを補正する周りの靭帯にも負荷がかかります。その結果、円板のずれや靭帯へダメージが起こり、口が開かない、開閉時に音がするという不定愁訴が起こりやすいです。
顎の周りの筋肉疲労は、かむ力が強いと、顎の周りの筋肉にストレスが係ります。筋肉は常に緊張した状態で、俗にこりが出てくる状態です。
朝起きた時に、顎がだるいと訴える方がおれらます。このような状態は、顎の周りの筋肉にストレスが夜中、ずーっとかかっている可能性があります。
むし歯や歯周病で歯を失い入れ歯になってしまうと、かむ力は50パーセント以下に減り、何でも思い通りに食べられなくなります。
健康な歯(すべての歯があり、思い通りにかめる状態)を100パーセントとすると、
かむ能力は、奥歯が1本無い場合は40パーセントになります。
また、ブリッジは90パーセントになります。
部分入れ歯は、30パーセントになります。
総入れ歯は、22パーセントになります。
「歯が無くなったら義歯(入れ歯)があるさ」と簡単に考えないでくださいね。
入れ歯は、何でもかめる訳ではないのです。
良く入れ歯でかめると言われる方は、歯があった頃のかめた状況を忘れている方がほとんどです。