感染症の予防について
⒈感染症予防の基本概念
感染症を予防するためには、感染症成立のための三要因に対する対応策、つまり、病原体対策、感染経路対策、宿主感受性対策を適切に行うことが基本となります。
病原体対策としては、感染源または感染者の早期発見と伝播防止(治療や隔離)、消毒、病原体の輸入防止策としての検疫、媒介動物の駆除などが行われます。感染経路対策における直接伝播防止としては、衛生教育、マスクやゴム手袋の着用、コンドームの使用などが行わられ、間接伝播防止としては、飲料水の消毒、食品衛生、媒介動物の駆除、感染者の廃棄物等の消毒などが行れます。宿主感受性対策は、非特異的対策として平常時からの健康の保持促進、衛生教育などが行われ、特異的対策として予防接種、免疫血清やy-グロブリンの使用などが行われます。
また、疾病の進展過程にならって、これらの対策を第一次予防としての発生の防止、個人および集団の抵抗性の確保、第二次予防としての感染者の早期発見、即時処置、流行事象の把握、第三次予防としての再発防止、患者の社会復帰という予防の各段階に対応させてとらえることも重要です。
⒉感染症対策上の問題点
➀耐性菌の出現と日和見感染
1929年ペニシリンの発見以降、さまざまな抗菌薬の開発がすすめられ、感染症治療に画期的な進歩をもたらせました。その一方で、変異を通じて抗菌薬に対する耐性を獲得した細菌(耐性菌)が次々に出現していて、メチシリン耐久性黄色ブドウ球菌(MRSA)やバンコマイシン体制腸球菌(VRE)のように、多くの既存の抗菌薬が効かない耐性菌が出現し、問題となっています。このような薬剤耐性菌の出現は、感染症治療における抗菌薬の安易かつ不規則・不十分な使用がおもな原因とされています。
一方、黄色ブドウ球菌や腸球菌は本来、病原性の低い常在菌であり、MRSAやVREの感染者の多くは入院中の抵抗力の低下した患者でした。このように疾病や投薬に伴う宿主の免疫力低下により、病原性の乏しい微生物が感染することを日和見感染といいます。高齢者や手術直後の患者、免疫抑制を服用している患者、HIV感染者など、現代には感染に対する抵抗力の減弱した宿主が増加をしています。医療機関や老人福祉施設などにおける感染防止や恒常的な監視、分析の強化とともに、抗菌薬の適正使用の徹底が重要になります。
②輸入感染症
輸入感染症とは、それまで国内ではみられなかったか、ほとんど流行していなかった感染症が海外旅行者や輸入動物、食品などを通して国内に持ち込まれたものをいいます。
輸入感染症は、近年国内でも注目を集めた重症急性呼吸器症候群や鳥インフルエンザばかりではありません。実はコレラ、赤痢、チフスなどの古典的感染症も海外旅行者数の増加、渡航先や渡航形態の多様化に伴って増加しています。今や感染症対策は国内のみを視野にいれたものでは限界があり、今後は国際的な連携を強化し、地球規模の対応を行っていく必要が生じていきます。
③院内感染の防止
院内感染とは医療機関内における感染症発生をいいます。近年、結核やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症の集団発生など、マスメディアに取り上げることも多く、社会的な関心も高まっています。医療機関はもともと、病原体の持ち込み、温存、伝播に対する好条件がそろっており、患者-患者ばかりでなく、患者-医療従事者感も含め、総合的な視点に立った監視や予防対策を医療機関内のすべてのスタッフが協力して実施することが不可欠となっています。
こうした中で、医療法が改正され、2007年度からは歯科診療所を含む無床診療所においても、院内感染防止のためのマニュアルなどの整備、職員研修の実施などが義務づけられることになりました。
コロナなど流行って中々歯医者さんに行きづらい方も多かったと思いますが皆さん安心して歯医者さんに来てくださいね!