お口の粘膜の病気とは⁉
お口の粘膜の病気は気づきにくい!?
口腔がんにつながりかねない、お口の粘膜の異常は、怖いなと思いつつも、「異常があれば自分で気づくだろう」とお思いの方も多いようです。しかし、患者さん自身がお口の粘膜の以上に早期に気付くのは、実際のところとても難しいのです。
口腔がんは、初期には痛みがなく、ある時点で急にスイッチが入ったように大きくなります。そのため実際のケースでは、痛みやしびれが出るほど進行してから異常に気付くほうが多いです。しかも、お口の中はただでさえ傷をつくりやすい場所です。擦り傷、噛み傷にくわえ、口内炎、歯周病など細菌による炎症、カンジダ症、色素沈着、水疱、アレルギー、感染症、全身疾患、薬剤の副作用、そして悪性腫瘍など、あらゆる可能性を検討しなければ、本当の原因には行きつけません。
粘膜の病理検査をもっと身近にしましょう
心配な病変がお口の粘膜に見つかった時、必ず受けていただきたいのが病理検査です。お口の粘膜の検査では、「細胞診検査」と「組織診検査」が現在一般的に行われています。細胞診検査は、疑わしい粘膜の表面を歯間ブラシのようなもので擦り、細胞(検体)を採取するだけで検査ができ、患者さんに負担の少ない手法です。かかりつけの歯科医院が連携する口腔外科や病院歯科を紹介してもらい、検査を受けましょう。細胞診検査でがん化が疑われた場合に、診断を確定するために行われるのが組織診検査です。粘膜の組織を切り取り、病理医が子細に調べて診断します。がん治療を行っている病院歯科や大学病院などの高次医療機関で受けることができます。
粘膜の異常所見
色 | 性状 | 診断 | |
粘膜下腫瘍 | 正常粘膜色 | 粘膜下腫瘤 | 間葉系腫瘍 |
唾液腺相当部 | 唾液腺腫瘍 | ||
黒色 | 境界線不明瞭な黒色、斑・腫瘤 | 悪性黒色腫 | |
上皮性腫瘍 | 紅色と白色の混在 | 乳頭状 | 乳頭腫 |
硬結・噴火口状潰瘍 | 扁平上皮癌 | ||
色素・出血 | 暗紫色 | 外傷の既往 | 血腫 |
黒色 | 境界明瞭な色素斑 | 外来色素斑・母斑・着色 | |
前癌病変 | 紅色と白色の混在 | こすると除去できる | 口腔カンジダ症 |
角化亢進 | 前癌病変・前癌状態 | ||
1~2個の小潰瘍 | アフタ性口内炎 | ||
多発性小潰瘍・水疱 | ウイルス感染症 |
この他の口腔粘膜の疾患
・白板症→口腔粘膜、特に頬粘膜や舌、歯肉などにみられる白い病変で、悪性化する可能性が高い。
・紅板症→舌、歯肉、その他の口腔粘膜に発生し、鮮紅色でビロード状、表面は平滑な病変。50%前後が悪性化するといわれています。
・扁平苔癬→皮膚や粘膜にできる角化性で炎症をともなう難治性の病変で、口腔では頬粘膜に多く認めますが、舌や口唇にも生じます。白い粘膜の角化がレース状にみられ、周囲に発赤を伴うのが特徴です。まれにがん化することもあります。
・口腔乾燥症→口の中が渇くのは、水分の摂取量が少なかったり、急激に多量の水分が失われたときに生じます。慢性的に水分の摂取量の不足が続く場合は、全身的な疾患や何か重大な障害が考えられます。
歯科で定期的に粘膜を診てもらいましょう
口腔がんの早期発見にとって、もっとも重要で効果的な方法として、信頼できるかかりつけの歯科医院を持ち、定期的にチェックを受けることです。なぜなら、ふだんの健康なお口を継続的・定点的に診てもらうことで、変化に気付き、変化の要因を推測してもらいやすいからです。初めての歯科医院に急患でかかったとき、もしも歯ぐきが赤く腫れていたら、まず疑われるのはおそらく虫歯か歯周病でしょう。しかし、いつも通っている歯科医院で、これまで虫歯も歯周病もなく健康だった患者さんの歯ぐきが急に腫れたとなると、「なにが起きたのだろう」と、真相に迫ったアプローチをしてもらえます。
日頃から歯科とこうした関係を築いておくことが、粘膜の変化への気づきと病理検査、早期発見へとつながります。