歯・口腔の健康と予防
⒈「歯・口腔の健康と予防」の定義
口腔の健康とは「口腔に病気がないというだけではなく、口腔が機能的で、それにより社会的および心理的にも良好な状態をいいます。
口腔衛生学は、歯・口腔の病気を予防し、口腔の健康を保持増進させることによって、全身の健康を保持増進し、もって健康な社会生活を営むことができるようにするための手段を研究する学問であります。人は複雑な社会環境と自然環境の中で生活をしているので、この目的を達成するには、自然科学のみならず、社会科学や人文科学の領域ともかかわりをもちます。
⒉「歯・口腔の健康と予防」の基礎
歯・口腔の健康の保持増進と歯科疾病の予防には、歯科臨床の場で個人を対象に行われる口腔保健活動と、市町村保健センターや学校などの社会の組織を通して行われる地域保健活動があります。これらは次の項目が基礎となって展開されます。
➀歯・口腔についての最新情報・手法(基礎歯科学的手法)、➁健康の保持増進についての手法(地域保健学、栄養学的手法)、➂歯・口腔の疾患についての正確な知見(臨床歯科学的手法)、➃歯科疾患の予防、抑制、保健管理についての知見(行動科学、社会歯科学的手法)
⒊「歯・口腔の健康と予防」の方法
一般に歯・口腔の健康の保持増進と歯科疾患の予防には次の3つの対応があります。
➀セルフケア.個人が自らの生活の中で注意していくものであります。食生活への配慮、丁寧な口腔清掃、フッ化物配合歯磨剤の使用などがあげられます。
➁プロフェッショナルケア.専門家が行う対応であります。これは歯科医療の一環として行われるものです。歯科予防処置を歯科医院でうけることなどがあげられます。
➂コミュニティヘルスケア.市町村、学校などの組織を通じて行われるもので、市町村保健センターでのフッ化物歯面塗布や歯科保健指導、学校におけるフッ化物洗口などがあげられます。
*ハイリスクストラテジーとポピュレーションストラテジーって ?
予防方法には、病気を発生しやすい高リスクを持った個人を絞り込み、高リスクを持ってない個人に対する不必要な介入を少なくする方法と、大多数でリスクが低い集団全体を対象に戦略を策定し、結果的に発症を減らす方法があります。前者をハイリスクストラテジー後者をポピュレーションストラテジーといいます。
⒋「歯・口腔の健康と予防」と健康づくり
⑴WHOの口腔保健の目標
12歳児の1人平均歯数は先進国では1960年頃、わが国では1980年頃をピークに減少していますが、発展途上国では遅れて増減してきています。1980年にWHOは、アルマ.アタ宣言を受け、2000年までに世界的に到達すべき口腔保健の目標を示し、1990年には2025年の目標を示しました。さらに2003年には、WHO2020年の目標として、共通のリスクファクターに対するアプローチによって、健康に関連した他分野に統合していくことなど、10項目の目標を示しました。
⑵8020運動と健康日本21および歯科口腔保健法
義歯を入れてる人が最もかみにくい食品である酢だこや古たくあんを噛むには喪失歯を10歯以内すなわち20歯以上保有する必要があります。そこで、平均寿命の80歳で自分の歯を20歯以上保とうとする8020運動が始まりました。この運動は1989年(平成元年)に厚生省「成人歯科保健対策検討嘉会中間報告」で取り上げられ、全国へ広がりました。2012年(平成24年)に告示された健康日本21では、2022(平成34年)に50パーセントにする目標が設定されています。2011(平成23年)、「歯科口腔保健の推進に関する法律(歯科口腔保健法)」が成立.公布されました。これにより8020運動を始め、生涯を通しての歯の口腔の健康づくりのさらなる推進が期待されています。2016(平成28年)には80~84歳で20歯以上保有される人は44.2パーセントに達しています。
何歳になっても好きなものを食べたいですよね?そのためには定期的に歯医者さんでお口の中を見てもらうことが大切になります。お口の中で気になることがあるなら相談だけでもいいので来院してもらえたら嬉しいです。