虫歯予防にフッ化物の応用
まず初めに、フッ化物とは自然界の水や土の中などあらゆる場所にフッ素という元素があり、フッ素は常にほかの元素と一緒になってフッ化物という形で存在しています。また、フッ化物は水や土だけでなくお茶や魚介類などの色々な食品に含まれており、私たちは日常的に摂取しているのです。人体にも必要不可欠な微量栄養素として、1日におよそ1~3㎎程度必要であり、主に骨や歯にあります。様々な調査研究を経て、現在は虫歯予防に適切な使用濃度や使用方法が明らかになっています。WHOをはじめとする多くの機関がフッ化物と虫歯予防の有効性を認めており、応用を推奨しています。
虫歯予防にフッ化物が役立つメカニズム
①歯の質を強くする
・歯が溶けにくくなる→フッ化物が紙面に触れるとハイドロキシアパタイトの一部がフッ素と置き換わってフルオロアパタイトと呼ばれる結晶に変化し、酸に対しての抵抗性が高くな るため、虫歯になりにくくなります。
・再石灰化を促進する→歯の周りにフッ化物イオンがあると、歯の再石灰化が早くなります。また、フッ化物イオンは歯の表面より少し内部の方に蓄積されるので、特に虫歯になりかけている部分に応用すると、内部に蓄積されたフッ化物が持続的なフッ化物イオンの供給源となり、虫歯の進行を抑制してくれます。
②虫歯の菌の活動を抑える
高濃度のフッ化物を使用した場合、虫歯の菌の増殖や糖の代謝、酸の産生が抑えられると共に、歯の脱灰の抑制にも役立ちます。
フッ化物による虫歯予防の効果
①フッ化物配合の歯磨き剤
現在、市販されている歯磨き剤の約9割はフッ化物が配合されています。幼児から高齢者まで生涯家庭で利用できる身近なフッ化物の応用です。毎日の歯磨きに適量のフッ化物配合歯磨き剤を使用することにより虫歯の予防になります。しかし、歯磨き剤の使用後すぐに何回もうがいをすることがあげられているため、フッ化物の局所応用の中で最も予防効果が低いといわれています。
フッ化物配合歯磨き剤の予防効果を十分に発揮させるために、適正な量の歯磨き剤を用いて、歯磨き後のうがいは10~15mlの水でうがいを1回だけにしましょう。
②フッ化物の歯面塗布
歯科医院や市町村の母子保健事業で高濃度のフッ化物が入っているジェルや液を歯に塗る方法です。生え始めの歯には特に効果的で3か月ごとぐらいに継続して行うと虫歯予防の効果が高くなります。
③フッ化物の洗口
適切な濃度のフッ化物が入った溶液でブクブクうがいを行う方法です。週5回法と週1回法があり、学齢期は週1回法です。うがいをして吐き出すだけなので、簡単にでき、比較的高い虫歯予防の効果が得られます。フッ化物洗口は、個人で行うより集団で行った方が安価で確実にできるため、より効果的です。薬剤は水で溶かす顆粒タイプとそのまま使用できる液体タイプがあります。
☆生えたての歯は未熟で、この時期にフッ化物を応用することで虫歯予防に特に効果的です。萌出してから時間の経過した歯でも効果的なので継続的にフッ化物を応用するようにしましょう。