痛みの原因が歯にない場合がある?
お口の周囲に起こる痛みには、「歯原性歯痛」と「非歯原性歯痛」があります。
歯原性歯痛と非歯原性歯痛
歯原性歯痛
お口の中やその周囲に起こる痛みの多くは、歯が原因となる歯痛であり、「歯原性歯痛」と呼ばれています。歯原性歯痛は、歯の中の神経や歯の周りを支える組織が原因となる痛みで、「侵害受容性疼痛」とも呼ばれます。問題のある部分に痛みを起こす物質が発生し、この物質が末梢神経にある侵害受受容器という部分を刺激することで痛みを感じます。
非歯原性歯痛
歯に原因がない歯痛を「非歯原性歯痛」と呼びます。この歯原性歯痛には様々な原因があり、歯を治療してもよくならない痛みです。「歯が痛くて歯医者に行ったのに治療をしてもらえなかった」となることがあるので、歯が痛くても歯に原因がない痛みがあるという知識は大切です。
非歯原性歯痛の原因
筋・筋膜痛による歯痛
非歯原性歯痛の中でもっとも多いのが、筋・筋膜による歯痛で、主に症状を感じやすいのは上下奥歯です。顎を動かす筋肉に負担がかかることで筋が疲労し、トリガーポイントと呼ばれるしこりのようなものができた結果、関連痛が発生して歯痛と感じます。どの歯が痛いか分からない場合が多く、鈍い痛みがずっと続く方もいれば、痛くないときもある方がいます。トリガーポイントを押すとうめくような痛みがあり、5秒ほど押し続けると歯痛が生じるのが特徴です。
※関連痛とは
関連痛とは、痛みの原因となる部位とは別の部位に感じる痛みのことです。痛みの発生源は、顎を動かす筋肉や内臓、鼻腔、関節などがあります。その仕組みはいまだ十分に解明されていません。
発作性神経障害性疼痛による歯痛
神経障害性歯痛とは、末梢神経または中枢神経の何処かに障害が生じて感じる痛みで、「発作性神経痛」と「持続性神経痛」に分けられます。発作性神経痛は、数秒から数分にかけて電気が走るような痛みが生じます。なにもしなければ痛みが生じることはありませんが、飲食や会話、歯磨き、髭剃りなどで痛みが生じるため、日常生活が困難になります。原因の多くは、神経と血管の接触によって生じるといわれていて、三叉神経痛や舌咽神経痛などの病気があります。
持続性神経障害性疼痛による歯痛
急性の場合と慢性の場合があり、急性の場合は、帯状疱疹ウイルスの感染症で帯状疱疹性歯痛とも呼ばれています。ウイルスが歯の神経まで達することでズキズキとした激しい痛みが生じます。慢性の場合は、歯の治療後に長く続く痛みで、数カ月続いてジンジンとした痛みがあります。
群発頭痛や片頭痛に伴って生じる歯痛
脳の神経は、顔面の痛みの神経と合流するため、頭痛と同時に歯痛が生じることがあります。
上顎洞性歯痛
上顎洞とは、鼻の左右両側にある骨の中の空洞のことです。上顎洞性歯痛とは、上顎洞内にできた病気が原因で、上顎洞内部に圧が加わったり、上顎洞内の炎症が歯の近くまで達することで生じる歯痛です。
心臓疾患による歯痛
狭心症や心筋梗塞などの疾患により、歯痛が生じることがあります。胸の痛みや顔面の痛みと連動した強い歯痛で、安静にしていると痛みが軽減することがあります。
神経疾患または心理社会的原因による歯痛
うつ病や統合失調症などの精神疾患がある方に生じた原因不明の歯痛や、ストレスが加わったときに生じる原因不明の歯痛があります。特にうつ病患者は痛みを生じることが多く、また痛みがあるとうつ病のリスクが高くなります。
特発性歯痛
歯原性歯痛でもなく、その他上記の非歯原性歯痛でもない原因不明の歯痛で、歯に原因がないため、治療をしても痛みがなくなることはありません。原因となる異常が見つからない場合に診断され、明確な原因は分かっていません。
一般社団法人日本口腔顔面痛学会「“原因不明の歯痛”の原因(非歯原性歯痛)」