歯周病におけるプロケアとセルフケア
歯周病ケアにおけるセルフケアは、歯科医師、歯科衛生士によるプロケアの効果を長く維持し、天然歯を長く保つために大切な役割を担っています。そのために、患者さんによって、また時期によって最適なセルフケア製品の選択は重要です。
☆歯周病の感染が拡大しないようにコントロールする
歯周病菌による感染症である歯周病の治療は、いかに継続してコントロールし、炎症による組織破壊を防止するかにつきます。歯周治療におけるプロケアは、歯肉縁上と歯肉縁下に分けて考えます。歯肉縁上では、歯面に付着したプラークを専門家が除去するPMTC、PTCが中心となります。歯肉縁下では、細菌の住処であるバイオフィルムや歯石を機械的に除去するSRPや歯周デブライドメントが主たる処置になります。
☆プロケアとセルフケアのバランスが大切
歯周治療においては、患者さん自身によるセルフケアや生活習慣の改善も大きな柱となります。メンテナンス時のセルフケアの目的は、プロケアで獲得した口腔状態を次回の定期健診まで維持することにあります。セルフケアでは、正しいプラークコントロールのための技術指導、適切なケア製品の選択、ホームケアの習慣化などが重要なポイントです。
☆病状安定のために継続的な支援ケアを
さらに、治療によって病状が安定したのちも、定期的な患者さんの全身状態・生活習慣の確認や、適切なプロケアの実施、セルフケアの評価などが必要です。この継続した支援ケアを「SPT=Supportive Periodontal Therapy」といい、近年、歯周病治療における重要な領域と位置づけられています。
☆「治りにくい」に対応したSPT
スケーリングやルートプレーニングで歯石やバイオフィルム状のプラークを除去すると、根面が滑らかになり、ポケットの上方から上皮が再生し象牙質を覆います。外見は治癒したかのように見えますが、実際には結合組織や骨は未再生で、上皮が象牙質に張り付いているだけのため非常に剥がれやすい状態です。これを「長い接合上皮性の付着」と呼び、この状態で、長期に継続したケアを行うことで再発を防ぎ、良好な状態を維持し、次第に結合組織や骨の再生を伴った治癒に移行することが期待できます。
☆歯周病の予防ケア(セルフケアのポイント)
〇歯医者で使いやすい歯ブラシを選んでもらい、ブラッシング習慣をつけるようにし、ブラッシング効果を実感できるよう具体的なケア方法も指導してもらいましょう。また、ブラッシングに慣れたら、歯間ブラシやフロスでの歯周のプラークコントロールにもトライしましょう。
〇歯磨剤は、磨き残したバイオフィルムに浸透殺菌できる殺菌成分や抗炎症成分配合のものが適しています。
〇就寝中は唾液の分泌量が減り、口腔内細菌が増えやすくなります。夜のケアでは殺菌効果のある洗口液の使用がおススメです。
歯周病の再発防止には、歯科医師、歯科衛生士による定期的なプロケアと、患者自身のブラッシングなどセルフケアでのプラークコントロールが不可欠になります。