小児にみられる口腔軟組織の異常と疾患②
小児にみられる口腔軟組織の異常と疾患について、前回挙げたように口腔粘膜や歯肉以外にもみられることがあります。
口唇
①口角びらん
胃腸疾患やビタミンB欠乏が原因で、口の両端(口角)に、ただれ、ひび割れ、赤み、かさぶたなどが生じる皮膚の疾患です。治療は原因に応じた薬物療法や生活習慣の改善が必要で、症状が続く場合は皮膚科や歯科の受診が必要です。
②咬傷
睡眠中無意識に頬粘膜を咬んだり、麻酔を行ったときに口唇の麻痺により自らを咬むことによって起こります。数日で自然治癒します。
③粘液嚢胞
小唾液腺の導管が傷つくことで、唾液が詰まったりもれたりします。口唇や舌の裏側などの粘膜下に唾液が溜まって袋状の嚢胞を形成した状態が粘液嚢胞です。小さなものは自然に消えることがあります。多くは再発を繰り返すため、生活に支障がなければ経過観察をし、支障が出る場合には、原因となっている小唾液腺ごと摘出する手術が検討されます。
舌
①リガ・フェーデ病
乳幼児の舌小帯や舌尖部に潰瘍が形成されたものです。生後間もない頃に下の前歯が尖っていて、舌の裏側に強く当たることで生じます。治療法としては、歯の先端を削って丸めたり、症状が重ければ抜歯をすることもあります。
②地図状舌
小児でも6歳以下の子に多くみられます。自覚症状はほとんどなく、舌の一面に円形または半円形の境界鮮明な赤色斑が数個出現し、癒合して地図状を呈します。日によって位置や形を変えます。原因は明らかではないが、ビタミンB2欠乏や体質異常などが考えられます。痛みや不快感がなければ、特に治療は必要ありません。
小帯の異常
①上唇小帯の異常
上唇小帯は出生の時には大きく、上唇と歯ぐきをつなぐひだ(小帯)が、本来移動すべき位置よりも歯と歯の間に低い位置で固定されたままの状態です。一般的には成長とともに小帯は移動しますが、小帯の異常で前歯にすき間ができる(正中離開)、歯列異常、むし歯や歯周病のリスクが高まる場合には、小帯の切除をする外科的処置が必要になります。
②舌小帯の異常
舌小帯は新生児には大きく、舌の裏側にある舌小帯が短かったり、舌の先に付着していたりして、舌の動きを制限される状態ですが、乳歯の萌出とともに、通常は退縮します。これが退縮しないと、舌を突き出したときにハート型になる、舌を上に持ち上げられない、発音が不明瞭になる、食事の時に食べ物をうまく飲み込めないなどの症状があります。乳児の授乳の際に困難な場合にのみ、小帯の切除が推奨されますが、学童期で発音や食事に問題がなければ、発音機能の発達を待ってから切除の判断をすることもあります。
③頬小帯の異常
乳臼歯が早期に喪失した場合などに、頬小帯が過剰に発達したり、頬の裏側にあるヒダである頬小帯の付着部位が歯肉に近すぎたりする状態です。機能的な障害がほとんど認められず、歯肉の退縮なども見られない場合には、経過観察となることもあるが、頬小帯の付着位置に異常や、機能障害を引き起こしている場合には、外科的な頬小帯の切除術や伸展術が行われることもあります。
流行性耳下腺炎
幼児から小学生に多く、ムンプスウイルスの感染によって引き起こされます。症状は、耳の下や顎の下にある唾液腺(耳下腺、顎下腺など)の腫れや痛みがでます。潜伏期間は2~3週間で、発熱や頭痛なども見られます。感染力が強く、感染者の咳やくしゃみで飛沫したウイルスを吸い込む「飛沫感染」や、ウイルスが付着した物に触れて口や鼻に触れることで感染する「接触感染」によって広がりますが、一度感染すると終生免疫が得られます。治療はウイルスに特効薬はないため、解熱剤の服用、幹部を冷やす、十分な補給と安静といった対症療法が中心です。
前回でも述べたように、口腔内の症状から全身疾患が明らかになる場合もあります。したがって口の中は、小児科の情報源ともいわれています。また、逆に全身疾患に罹患している場合には、これらの症状が現れやすいので注意が必要です。