子どもの口腔機能を育てよう!
口腔機能とは
口腔機能とは、咀嚼や嚥下、発音、表情を作る機能などを指します。高齢期に口腔機能が低下すると、咀嚼機能の低下で栄養摂取不良から低栄養になったり、嚥下機能の低下で誤嚥性肺炎のリスクが増大したりするなど、生命の維持に影響します。また、発音や表情を作る機能が低下するとQOL(生活の質)や認知機能の低下に影響します。
口腔機能は学習するもの
口腔機能は生まれつきあるものもありますが、ほとんどは子どもの頃に親や周囲の人をまねたり、教わったりしながら学ぶものです。5歳頃までにしっかりとした嚥下・咀嚼機能を身につけることは、その後の口腔機能や体の成長が期待できます。
子どもの頃に覚えた食べ方は、大人になったからといって簡単に改善することはありません。大人でも早食いで、口を開けてくちゃくちゃさせながら食べている人もいます。
口腔機能の低下は口呼吸の原因
現代では昔と比べて、口を使った遊びや会話をする機会が少なくなっています。スマートフォンやゲーム機を使用している体勢は、身体や口腔機能に関する筋肉に悪い影響を与えています。口腔機能が低下し、口呼吸でいつも口をぽかんと開けている子どもたちが増加しています。
鼻呼吸の大切さ
鼻から空気を取り込む際、鼻毛や粘膜が花粉やほこり、細菌などの異物をブロックします。また空気が鼻を通過する際に、空気が適切な温度や湿度に調整されます。しかし、口呼吸の場合は冷たく乾燥して異物の入った空気が直接喉に当たり、肺に入っていきます。そのため病原菌が繁殖しやすい状態となり、炎症やアレルギーを引き起こしやすくなります。また口呼吸では口の中が乾燥するため、唾液の作用が働きにくく、虫歯や口臭の原因となります。
口腔機能発達不全症
口腔機能発達不全症とは、食べる機能や話す機能などが十分に発達していない状態のことです。口腔機能の発達が不十分とみられる子どもが増加していることを受け、平成30年に口腔機能発達不全症が医療保険で対応できるようになりました。口腔機能は、20歳前後をピークに、加齢とともに低下していきますが、子どもの頃に適切な口腔機能が獲得されていないと、大人になったときに正常な口腔機能まで達することができず、高齢期の口腔機能の低下が早くなります。
家庭でできる口腔機能の発達促進
①食を通した取り組み
離乳し、食べ物を潰す、噛むという動作を行うことによって、咀嚼筋が発達し、舌も複雑な動きができるようになり、口腔機能が発達します。食材の大きさを少し大きめに切ることや、少し硬めにゆでることで咀嚼の負荷を大きくすることができます。食事の際は、テーブルや椅子の高さが適切で、足の裏が床にきちんとついているかを確認することがとても大切です。
②うがいを通した取り組み
うがいは口の中の汚れを除去したり、口の筋肉を発達させるために大切です。3歳頃でぶくぶくうがい、5歳頃でがらがらうがいができるようになります。保護者の方と一緒にまねしながら楽しく取り組みましょう。
③遊びを通した取り組み
遊びの中で口に力を入れたり、閉じたりすることで、口唇や頬、舌、呼吸などの口の機能の発達を促すことができます。口の機能の発達は、言葉の発達にもつながります。ラッパや風船、シャボン玉などのおもちゃで楽しく口遊びを取り入れていきましょう。
歯科医院での取り組み
歯科医院では、チェックリストや様々な検査によって、口腔機能発達不全症の診断をします。食べるのに時間がかかる、歯が生えてくるのが遅い、発音がおかしい、いつも口が開いている、など、気になることがありましたら、一度歯科医院を受診して相談してみることをおすすめします。