唾液のムチンはご存知でしょうか?
唾液には粘り気があります。
これもお口の健康を保つために重要な役割を果たしています。
唾液には、食事の時はおもに耳下腺から分泌されます。
普段は顎下腺と舌下腺からが中心です。
顎下腺や舌下腺からの唾液は、耳下腺からでる唾液に比べて2~3倍粘り気があります。
しかもお口全体にある小唾液腺から分泌される唾液は、さらに粘り気があります。
この粘り気は「ムチン」という成分によるものです。
ムチンは糖タンパクというたんぱく質の骨格に、糖が結び付いた構造をしています。
この構造が水を引き寄せ、粘り気を生み出します。唾液の主成分です。
唾液の99.4%は水分であり、この水分はお口の保護をするのに欠かせません。
ここで味覚を例にとって水分の重要性についてお話しましょう。
味は舌や上あごの奥の方にある「味蕾」という小さな器官で感知します。
味細胞が集まって構成されていて味蕾の味孔という穴から味の物質を取り込み味細胞に伝えています。
「味の物質は水で溶かさなければ味蕾に到達しない。だから唾液が減少と、味がわからなくなる」言われることがあります。
実際は唾液が少なくても味が大きく損なわれることはありません。
というのも、食事中に必ず摂取される水分で味の物質を溶かすには十分だからです。
このことは、実際の患者さんを通して確認されています。
例えば、のどや唾液腺の悪性腫瘍の治療で、放射線療法がおこなわれると、正常な唾液腺やお口の中の細胞がダメージを受ける事があります。
その結果、唾液の分泌量が減り、お口の粘膜がただれ、味覚障害が発生します。
味覚障害は時間とともに回復することが多いです。
しかし、その際、唾液の分泌量が十分でなくても味覚は回復することが確認されています。
つまり、味細胞が再生されれば、味覚は回復するのです。
但し、唾液が少ないと味細胞が損傷しやすく、再生しにくいこともまた事実です。
ラットの唾液腺を切除して味覚の変化をしらべた実験があります。
顎下腺と舌下腺を切除すると、その味覚の変化を実験があります。
顎下腺と舌下腺を切除すると、その部分だけ唾液が減って乾燥し、味細胞も変化し、1週間以内に味覚が低下しました。
しかし、特殊な装置を使って1日中コンスタントにお口の中に水分を補給し続けると、1週間で味覚が元に戻るという結果が得られました。
これは、唾液の水分が味細胞を守る役割を果たしている事を示しています。
現実には、唾液の分泌量は1日中一定ではなく、時間帯や姿勢によって変動します。
座っているときより立っている時の方が多く、横になっているときは少なくなります。
そこで、重要になるのが「ムチン」です。ムチンは水としっかり保持する性質があります。
唾液に粘り気を与えて、しかもお口の中を長時間保護することができます。
ムチンを含んだ人工唾液を使用すると、その効果が長続きするという研究もあります。
ムチンは抗菌作用もあります。
病原菌からお口を守ります。唾液中でバリアを張ります。
病原菌である細菌やウイルスが口腔粘膜に付着するのを防ぎます。
ラクトフェリンやアミラーゼ、リゾチームなどの酵素と連携して細菌やウイルスの細胞壁を破壊して、増殖を抑制します。
ムチン自体が病原体を捕まえて飲み込み、胃酸で殺菌させるメカニズムも持ったおります。
ムチンは消化を補助します。
ムチンは、酵素やそのほかの唾液成分とお互い作用しあい、消化の補助を行います。
その結果、皆様が食べる食べ物を柔らかくして消化酵素がより効果的に働く状況を提供して参ります。
ムチンは、水分を保持することで、お口の粘膜を物理的に保護し、外部からの刺激や細菌から守るバリアの役割や抗菌作用、消化補助作用を果たしているのです。