噛むことの大切さ!!③
年老いても日々おいしく食べるには、歯はもちろん、口腔機能をトータルで考えることも必要です。食べ方についても、嚥下のみに主眼を置くのではなく、食塊形成を意識し、噛んで食べることの意義と重要性、食形態についても理解を深め、現状の口腔機能に適した食事メニューの選択を家族や周囲の人が共有できるようになると良いでしょう。
ゆっくり時間をかけて咀嚼することは、誤嚥や窒息の予防になるとともに食物を味わううえでも大切です。年齢を言い訳に諦めるのではなく、健康維持やフレイル予防の一環として、普段の食生活から改善できることを見つけましょう。
1.食塊形成の重要性
一言で「噛む」と言っても、一般的にはピンとこない方が多いと思われます。そこで、食塊形成についてわかりやすく伝えるため、「餅つき」を例に説明してみましょう。たとえば、杵と臼だけを使って「餅つき」をするとどうなるでしょうか。はじめは調子がいいかもしれませんが、そのうち餅は乾燥し、グチャグチャな状態で杵や臼に張り付いてしまい、到底、餅の塊はできません。では、しっかり餅の塊を作るには、何が必要か。それは、水と手でこねる動作です。つまり、口腔の役割に置き換えると、水が唾液で、手でこねる動作が舌の運動に相当します。実際に食べるときも、食物が口に入ると口唇は閉じ、歯で咬断・粉砕し、舌の運動によって唾液と混和されます。そして、食塊が形成されると、舌によって喉に送り込まれます。したがって、十分な食塊形成を行うためには、歯だけではなく、唾液と舌の運動も大切な要素です。
噛み合わせについての、詳しい対応方法等は、「噛み合わせページ」
2.薬がうまく飲めている?
機能が低下すると薬を飲むのも一苦労です。
口腔機能が低下した高齢者では、複数の疾患を抱えていることが多く、何種類もの薬を内服しているケースがみられます。一言で薬と言っても、細粒、錠剤、カプセル剤、シロップ、OD錠などさまざまな剤形が存在します。咀嚼や嚥下機能が低下すると、食事だけでなく薬を飲むことも難しくなり、口腔内に残留することがしばしばあります。特に、口唇や舌の筋力が減弱すると、錠剤やカプセル剤を水またはお茶と一緒に飲み込むことは難しいです。それだは、とろみ水などと一緒に内服すれば、少々マシのように思えるかもしれませんが、仮に、とろみ水や牛乳だけなら誤嚥することなく飲めても、錠剤やカプセル剤が一緒だと誤嚥しやすくなるという報告があります。また、摂食嚥下障害の高齢者では、他の剤形に比べOD錠が内服しやすいという報告がありますが、適応剤形は人によって異なり個人差も大きいものです。内服しやすいように、薬をゼリーやヨーグルトと混ぜるなど工夫して飲むこともお勧めします。
口腔内を診て、声掛けをしましょう。
口腔ケアの際など、薬剤の残留がないか口腔内を観察し、しっかり飲めたか確認しましょう。特に、歯肉と頬粘膜の間、硬口蓋、舌下部、義歯の粘膜面(裏側)には錠剤やカプセル剤が残留しやすいです。口腔機能の低下により服薬に影響が出ていることが懸念されます。したがって、日頃から「薬はうまく飲めていますか?」と一言声をかけてみるのも良いでしょう。場合によっては、本人に適した剤形に変更する必要もあるため、主治医と処方の相談をするきっかけを作ってあげることができます。
口腔ケアについての、詳しい対応方法等は、「予防プログラムの詳細・流れページ」

3.食生活(習慣)の把握
その人によって口腔機能は異なり、当然、食べ方も千差万別です。本人が自覚している以上に、知らず知らずのうちに食事のバランスは偏っていることが多いのが現状です。また、口腔機能の低下で咀嚼しにくくなり、弾力のある肉類、繊維の多い野菜や果物などが敬遠されると、タンパク質やビタミン、ミネラル、食物繊維が不足しがちです。とくに、高齢になると摂取する食品が単一的になりがちで、比較的食べやすい糖分の多いものが中心となりやすいため、栄養のバランスも重要です。